変化

土曜日の練習始まりを、じっと見ていた。
まだまだ、体も温まらない、温める準備段階だな。

いつもやってるメニューを、次々に、こなして行く。
別に、今日初めて見た訳では無いが、
この日は、特に、嫌な臭いを感じたので、
部長を呼び、「ここに座れ」と、私が座ってるベンチの横に座らせた。
「ちょっとここで、みんなの練習を見てろ」と言い、
2人で、練習を見ていた。少し経って「お前、これ見てどう感じた」と聞いた。
部長は、技術的に出来て居ない事を言って来たので、
私の感じた事を話した。

「お前達は、スロースタートだろ、その原因がこれだと思うよ」
試合は、自分達の都合に関係無く、時間が進行し始まる。
お前達の練習の始まりは、号令と共に行われ、
一見、それが始まりの様に見えるが、
実際は、とてもいい加減で、部員個々に、始まりの線引きが違ってる。
難しい言い方かも知れないが、「ヨ～～シ、やるか」がバラバラなんだよ。
慣れに、成れきってるんだな。
練習は同じ事を繰り返すことが多く、次第に慣れが生じる。

お前達だけが、そうだとは思わないが、
試合や練習試合で、自分達の良い所、悪い所を感じて、
それを、練習メニューで修正したり、強化したりと思ってるのだろうが、
だがな、その一番最初の始まりが大事。
時間の線引きをすると言う事は、殆どが外部からの物が多い。
始業時間や、試験日、大会日、試合時間。
これって、自分達では決められないだろう。
でも、練習の始まりは？誰かが決めてる物じゃ無く、自分達で決めてる。
「さあ、やるぞ」が自分達始動な筈なのに、それを、あやふやにしてどうする？

「ねえ、ちゃんとやってよ！」
注意を促す時に、掛ける言葉も、それに近い物が多い。
どう言う事だかわかる？
どちらも、自発的では無いと言うことだ。
練習の始まりも、いい加減で、バレー部員で無くても出来ちゃうような始まり方。
注意する側が、注意される側に、依存してる促し方。

付き合ってる2人が、デートする日。
「ねえ、今日どうする？」と彼女が聞くが、彼は「別に・・・」
これって頭くんべ？
せっかくのデートの日で、嬉しいはずなのに、ワクワクしてるのに、
別にはねえだろうと思わない。
私は、お前達の練習を見てると、この彼女のような気持ちに成っちゃうんだね（＾＾；；；

「お前も経験あるだろうが、オレがここで、オイ！テメエらって言うの簡単だろ
お前も、そう言うバレーされて来た1人、でも、それってどう思う？
結局、言われてやる事に成っちゃう。高校生に成って、それじゃ、つまらないと思うよ」

「もういいよ、練習しろ」と部長を練習に戻した。
部長は、全員集合するよう声を掛け、何か話しをしていた。
でもね、恋と同じで、思うように行かないと思うよ（＾＾；；；
昨日まで、ウキウキだった気持ちが、今日は、不幸のズンドコに落ちる。
好きな人が出来ると、そんな事しょっちゅうだろうが、
部員を纏めて行くとかも同じで、自分の思う通りなんて直ぐには出来ない。

じゃあ、何を持ってそれに対処するか？
それは、顧問がお前に感じた「やろう」と言う気持ちの強さしか無いだろう。
「やってよ」じゃ無く「やろうよ」が言える人。
体は小さいが、その気持ちの大きさは、誰も感じる所だと思う。
技術的な事が、殆どを締めてしまうのだろうが、
上に立つ人は、そうじゃ無い部分を期待され選ばれてる。
お前が変化することで、チームも変化して行くのです。
変化には、痛みが伴う。
長年、顧問をしてる人は、そんな事は百も承知してる。
それでも、やろうと言う気持ちの強さが、
仲間を引き込んでくれることを知っている。
その、やろうと言う気持ちに仲間が何かを感じ、
引き込まれた時、何物にも代えがたい何かを掴むことが出来る。
それはね、これからのお前の財産に成るはずです。