中村勘三郎さん逝く

だいぶ前の話だが、私は小学生で何年生か覚えていない。
当時、足立区に住んでいて、親父は、現在足立新田高校が
建っている場所にあった、東京セロファンと言う会社に勤めていた。

そこは工場で、工場の入口は川側の道路に面した所にあった。
アリサ達には分かるだろうが、今はその道路はとても狭く、
堤防はとても高く成っていて、当時とは、面影がだいぶ違う。
堤防も、小学生の私が容易に上れる高さでした。

ある日、工場で映画の撮影があると聞き見に行った。
工場の正門はとても大きく、門の両側からガラガラと真ん中で閉じられる物。
工場前には沢山の人がいたが、見物客よりスタッフと出演者が多かった。
私は、堤防に上り、そちらを見ていると、正門の扉を閉め、
工場内に、出演者の方々がスタンバイ、その真ん中に学生服姿で
立っていたのが、中村勘三郎さん。当時は勘九郎さん。
私より、年は二つ上だが、学年で言うと一つ上に成る。

「ヨ～イ！スタート」の声と共に、
門の反対側から、この出演者達に向かって放水。
デモのシーンなのか、勘三郎さんを含め、大勢の出演者達が大声で
怒鳴っているシーンの撮影だった。
ありゃ、一体なんて言う映画だったのか、それすら未だに分からないのだが、
勘九郎と言う名前だけは覚えている。

後に、大役者に成られる訳だが、歌舞伎役者と言うお堅いイメージと違って
取っつきやすい人柄が好印象だった。
役者と言う事を抜きにしても早すぎる死だ。

ご冥福をお祈り致します。